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正反対に、現在の政策学部は18歳から24歳といったごく限られた世代だけで占められている。
しかし、コンピュータや語学といった皮相的な面での実学志向よりもより深い意味での実践志向を政策学部はめざすべきではないか、一つは、公務員の政策立案能力の向上であり、スローガン的にいえば、現在公務員の主流をなしている法律学的思考からの脱却と政策マインドの育成である。もう一つの、そしてより重要なのは、立命館大学政策科学部長である山口定が指摘した「市民社会のレベル・アップ、市民に政策能力を持たせること」である。市民運動も、在来型の何でも反対という抵抗型運動から、有効なオールタナティブを提案できる政策能力をもった運動へと脱却する方向を模索する段階にある。政策系の学部は、行政や企業に対抗できる政策能力を持った市民や市民運動の育成にもっと積極的な役割を果たすべきであろう。
政策系学部を通して行政官に市民に配慮した柔軟な思考が育成され、市民の側にも政策提案能力が育成されれば、いささか楽観的な展望だが、政策系学部が現在の地方自治体の手詰まり状態を打破し、市民と公務員が同じテーブルで生産的虹議論をしあえる土壌を提供できる可能性を秘めているのではないか。それは現在の企業サイドのニーズにマッチした実務能力のある学生を輩出する「専門学校的性格」よりもはるかに設置理念に合致しているのではなかろうか。
学部を社会人に開放することは、教員の側にもプラスの効果を生み出すことになる。これは自戒を込めていうのだが、現在の細分化された政策系学部の科目体系では、各教員は自分の得意科目だけを教えれば良い。政策科学系の科目といっても、政策科学概論から政策過程論、政策形成論、政策実施論、政策管理論、政策評価論、比較政策論、行政組織論、予算編成論などのようにさらに細分化されており、それぞれ専門の教員が担当するような講座編成になっている。これは最先端の学問を学生に教えるという面ではメリットをもっているが、教員が自分の狭い専門に埋没するというマイナス面も抱えている。しかも、上記の細分化された専門科目は、決して「実学志向」が強いものではなく、むしろ極めて専門性が高いといえる。したがって、総合政策学部の教員が多様化したカリキュラムの中で自分の得意科目だけに埋没する現状がそのまま続くなら、実務や身近な問題の解決のために役立っ専門能力を獲得したいと希望する社会人の期待と大学の現実との間のギャップがいつまでも続くことになる。
つまり、社会人を積極的に受け入れることは、教員がつねに自己の専門分野の社会的有

 

 

 

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